起立性調節障害とは、立ち上がった時にめまい、頭痛、動悸などの症状が出る身体の病気です。
血管や心臓といった循環器系の自律神経の調節に不調をきたすことが主な原因で、思春期前後に多く見られます。
朝起きることが難しかったり、起床時に体調不良を感じたりする起立性調節障害は、まだまだ認知度が低いことから、「怠けなのではないか」「気持ちの問題じゃないか」「サボっているだけだよね」と理解されず、その結果本人が苦しみ、学校生活に支障をきたすこともあります。
日本小児心身医学会によると、軽症例を含めると中学生の10人に1人が起立性調節障害を持ち、不登校の約30~40%が起立性調節障害を有しているとされています。実に多くの子どもたちが、この病気で悩んでいると言えるのではないでしょうか。
起立性調節障害で苦しむ子どもが安心して日々を過ごすためには、親御さんだけでなく、学校の理解も重要となります。
この記事は、起立性調節障害の社会的な理解が進むことを目的に医師の監修のもと、このような方に寄り添うため執筆しています。
- 起立性調節障害で悩んでいる方
- 起立性調節障害の子どもを持つ親御さん
- 起立性調節障害の生徒を持つ先生
起立性調節障害は、本人のやる気や気合いで乗り越えられる病気ではありません。親御さんと学校の先生と医師とが連携して、起立性調節障害に悩まされている方の理解・サポートが充実することを願い、症状のセルフチェックから治療方法まで、分かりやすく紹介いたします。
最後には、起立性調節障害のサポート事例までご覧いただけます。ぜひ、最後までご覧ください。
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起立性調節障害(OD)とは

起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)とは、血管や心臓といった循環器系の自律神経系(生命維持に必要な体内の働きを自動的に調節してくれる神経のことで、交感神経系と副交感神経系に分かれる)の機能不全が主な原因で発症する病気です。
起立時に、頭痛やめまい、倦怠感などの症状が見られます。思春期に発症しやすく、身体の成長と急激な変化に伴う疾患のため、誰しもなりうる病気で、中学生の10人に1人がかかっていると言われています。
英語名の”Orthostatic Dysregulation”を略してODと呼ばれています。
起立性調節障害のメカニズム
人の身体は、仰向けの状態から起立すると、重力によって一時的に血液が下半身に貯まり、血圧が一時的に低下します。
しかし、健康な人の場合は、すぐに自律神経系が働き、これを代償します。ノルアドレナリンというホルモンが分泌され、下半身の血管がぎゅっと収縮します。すると十分な量の血液を再び心臓に戻すことができるようになり、その結果、血圧や脳の血流が問題なく保たれるのです。
一方で、起立性調節障害の場合は、上に述べた仕組みのどこかに不調があるため、このようにはいきません。下半身に血液が貯まってしまい、血圧が低いままの状態が続いたり、心臓が過剰にバクバクしたりします。その結果、脳の血液が不足し、めまいや吐き気、頭痛、朝起きられないといった症状が生じるのです。
血圧を調整する機構のどこに異常があるかで、4つ(+2つ)のサブタイプに分類されます(後述)
起立性調節障害の特徴
起立性調節障害では、以下のような特徴がみられることがあります。
- 朝起きれないが、昼からは元気になっている
- 夜に目が冴えて寝られなくなる
- 症状が悪化すると、昼夜逆転生活になる
- 立ったり座ったりすると症状が強まり、横になると軽減する
- 日によって程度が異なる
- 雨の前など気圧変化に影響を受ける
中学生の10人に1人が発症

起立性調節障害は、身体が大きく変化する思春期に発症することが多く、小学生の20人に1人、中学生の10人に1人が罹患していると言われています。
起立性調節障害は、10~16歳(小学5年生~高校2年生)が好発年齢と言われており、男子よりも女子にやや多いとされています。
有病率 | 軽症例を含めると、 ・小学生の約5% ・中学生の約10% ・重症は約1% 不登校の約3-4割にODを併存する。 |
性差 | 男:女 1:1.5~2 |
好発年齢 | 10~16歳 |
遺伝・家族性 | 約半数に遺伝傾向を認める |
春から秋にかけて、暖かい時期に症状が悪化する傾向にあり、特に新学期の時期に発症することが多いため、学校生活に支障をきたすことや、不登校や引きこもりのきっかけになることもあります。
「理解不足」が症状悪化の原因に
起立性調節障害に苦しむ子どもにとって、「身体が辛いのに登校しなければならない」というストレスは、症状悪化の原因になります。
一般的にはまだまだ認知度が低いため「身体が起こせない病気」を理解されず、「怠け」「サボり」「気持ちの問題」など、心無い言葉に苦しめられる病気でもあります。
親御さんの中には、子どもの症状を「スマホへの使いすぎ」や「夜更かし」、「学校嫌い」などが原因だと考えて、怒ったり、無理やり起こそうとしたりする方もいらっしゃるかもしれません。親として、「学校にきちんと通って欲しい」、「生活習慣を整えてほしい」と思うのは、とても自然な気持ちです。
また、どこかで「子どもがこうなってしまったのには、親に責任があるのではないか」とご自身を責めてしまい、結果として本人に強い口調であたってしまうこともあるかもしれません。
一方で、そうした対応の結果、起立性調節障害の症状が悪化するだけでなく、親子関係にまで支障をきたしてしまうリスクもあります。子どもが家にも学校にも居場所がないと感じ、部屋にこもりがちになると、運動不足や昼夜逆転になってしまい、さらに起立性調節障害の症状も悪化することもあります。これは、「二次障害」と呼ばれます。
医療機関で正しい診断を受けた上で、親御さんが「起立性調節障害は身体の病気」であることを理解し、「治療には時間がかかる」など正しい知識を持って、焦らず対応する方が、二次障害を防ぎ、良い結果につながることが多いです。
繰り返しますが、起立性調節障害は、本人のやる気や根性で治るものではありません。また、親御さんの育て方が原因で起こるものではありません。
学校の先生や医師と連携して、家庭と学校の環境整備から適切な治療まで、起立性調節障害に悩まされている子どもの理解・サポートを進めることが、子どもの将来や今後の親子関係のためにはとても重要になります。
起立性調節障害の原因
起立性調節障害の原因は、下記のものがあげられます。
- 起立時に働く循環動態の変動に対する自律神経による代償機構の破綻
- 思春期のホルモンバランス・神経・循環器系の急激な変化
- 過少・過剰な交感神経系の活動
- 水分の摂取不足
- 学校や家庭でのストレス
- 日常活動量の低下による筋力低下と自律神経機能悪化
- 遺伝的要素
起立性調節障害の症状
起床時に頭痛やめまい、立ちくらみ、吐き気などがみられる場合、起立性調節障害が疑われます。
特に、雨が降る前日にこれらの症状が悪化する場合や、午後には体調が改善する場合は、医療機関を受けることもご検討ください。
起立性調節障害には、下記のような症状も見られます。
- 頭痛
- 立ちくらみ、めまい
- 動悸
- だるさ、倦怠感
- 吐き気、気持ち悪さ
- 食欲低下
- 車酔い
- 腹痛
- 顔面蒼白
- 失神
起立性調節障害のセルフチェック

下記の症状にうち、3つ以上、あるいは2つ以上の強い症状に当てはまる場合は、起立性調節障害の疑いがあるとされます。
- 立ちくらみやめまい
- 立った時に気分が悪くなる、ひどくなると倒れる
- 入浴時や、嫌なことを見聞きしたときに気分が悪くなる
- ときどき腹痛がある
- 少し動くと動悸・息切れがする
- 朝、中々起きられず、午前中に調子が悪い
- 顔が青白い
- 食欲が湧かない
- 倦怠感(だるさ)がある、または何をやっても疲れやすい
- 頭痛が辛い
- 乗り物に酔いやすい
そのほか、中等症や重症になると、記憶力や集中力、思考力が低下して勉強に手がつかなくなることや、イライラしやすくなったり、落ち込みやすくなったりすることもあります。
ただし、こうした症状がある場合でも、起立性調節障害以外の病気の可能性がないか、医療機関できちんと調べてもらう必要があります。
貧血や心臓病、てんかんなど、全く別の病気である可能性もあります。また、起立性調節障害の診断は正しいけれども、発達特性(発達障害の人が持つとされる個性)や精神疾患などが実は隠れている場合もあります。
このため、症状だけで自己判断をしたり、正しい診断を先延ばししたりするよりも、信頼できる医療機関を早めに受診することをおすすめします。
起立性調節障害の診断や治療は小児科で行われることが多いものの、実施できる検査・治療の内容、起立性調節障害に対する専門性の高さや、受診可能年齢は、各医療機関ごとに異なっています。受診前に医療機関のウェブサイトを確認したり、問い合わせをして、必要な情報を事前にチェックすることもご検討ください。
起立性調節障害の診断

医療機関を受診後の、起立性調節障害の診断の流れは、次のとおりです。
- 問診で症状やその程度を確認
- 起立性調節障害以外の病気の可能性を除外
- 新起立試験などの検査を実施
- 重症度を判定
- 心理社会的関与(本人のストレスや、環境に対するしんどさ)を評価
新起立試験の方法
起立性調節障害の疑いがある場合、「新起立試験」と呼ばれる検査が実施されることが多いです。
新起立試験では、横になり10分間安静にした状態から起立し、心拍数や血圧の変化を測定していきます。
この試験によって、4つのサブタイプを判定します。
起立性調節障害の4サブタイプ+2
起立性調節障害には、下記4つのサブタイプがあります。
- 起立直後性低血圧(INOH)
- 体位性頻脈症候群(POTS)
- 血管迷走神経性失神(VVS)
- 遷延性起立性低血圧(delayed OH)
最近では、下記の2つのサブタイプも報告されていますが、診断には特殊な装置が必要になります。
- 脳血流低下型(起立性脳循環不全型)
- 過剰反応型(Hyper-response型)
起立性低血圧(INOH)タイプ

起立性調節障害の中で、最も多いタイプで、全体の23%を占めます。
起立直後に血圧が大幅に低下し、立ちくらみ、だるさ、頻脈(脈が1分間に100回以上になること)等の症状が出現します。血管を収縮させるノルアドレナリンの分泌が低下しているため、血圧の回復までに時間がかかります。
体位性頻脈症候群(POTS)タイプ

起立性調節障害の中で、2番目に多いタイプです。
起立時の血圧低下はないものの、心拍数が異常に増加します。起立直後性低血圧(INOH)とは異なり、立ちくらみはそこまでではないものの、頭痛やだるさが強いといわれています。立った時に、過剰に交感神経が興奮してしまったり、アドレナリンが分泌されすぎたりすることで生じると考えられています。
血管迷走神経性失神(NMS)タイプ

起立中に急激な血圧低下が起こり、失神を起こすタイプです。
顔面蒼白や冷や汗などの症状が見られます。立った時に過剰に頻脈になり、心臓の空打ち状態が起こることで引き起こされるとされ、起立直後性低血圧(INOH)や体位性頻脈症候群(POTS)に伴ってみられることもあります。
遷延性起立性低血圧

起立直後には血圧低下しませんが、起立状態が続くと数分以上をかけて徐々に血圧低下が進み、失神することがあるタイプです。
血管の中でも、静脈がうまく収縮しないことで起こるとされています。
起立性調節障害の治療方法
起立性調節障害の治療は、第一に「起立性調節障害がどんな病気か」をよく理解することから始まります。
そして、生活習慣を整えることが大変重要になります。とはいえ、起立性調節障害を克服することは簡単なことではありません。
日常生活に支障のない軽症例では、適切な治療によって2〜3ヶ月で改善することが多いといわれています。一方で、重症例では、2〜3年以上を要することもあります。
治療には時間がかかることも少なくないため、焦らないことも重要です。
親御さんや周囲が治療方法を本人に押し付けるのでは、うまくいかないこともあります。ご本人、親御さんが起立性調節障害のメカニズムについてよく理解し、双方が納得できる形で生活習慣や服薬のルール作りを一緒に考えて取り組めることが理想的です。
起立性調節障害の治療方法を目的別に4つ、紹介いたします。
起立性調節障害の治し方①循環血液量(体内をめぐる血液の量)を増やすために

塩分摂取量を多めにする
塩分を取ることで、体内の循環血液量を増やすことができます。
目安としては、1日10~12g摂取しましょう。(一般的には6~7g推奨)
塩分摂取のために、以下のような工夫をしている人もいます。
- ラーメンやうどんの汁は全部飲む
- 味噌汁やスープを積極的に摂る
塩分の多い食べ物で言うと下記の食べ物などが挙げられます。
- ちくわなどの練り物
- 市販のサラダチキン
- 塩鮭
- 漬物
- カルボナーラなどのスパゲッティ
- 牛丼
- カレーライス など
その他にも自分が食べやすいもの・好きなもので、塩分を摂る工夫をしている人もいます。ふだんの食事や、間食の塩分量を自分でチェックしてみるのも良いでしょう。
水分を多く摂取する
体重30kgの場合、1.5L。体重45kgの場合、2L/日を目標に摂取しましょう。
「1時間ごとにコップ1杯の水を飲む」など、ルールを決めていたほうが取り組みやすくなります。
起立性調節障害の治し方②心臓へ戻る血液量を増やすために

無理のない範囲の運動で筋力の低下を防ぐ
- 15~30分の散歩
- 寝ながらの運動
- 立っての足踏み
- スイミングなど
しんどいからといって動かずにいたために筋力が低下すると、そのために下半身に血液が溜まりやすくなり、さらに起立性調節障害の症状が悪化するという悪循環が生じてしまいます。
立っている時、動かない時間は1~2分を限度にする
電車やバスで立つ場合には、両足をクロスさせて圧迫させたり、足踏みやつま先挙げを行いましょう。
起き上がる時は、お辞儀のポーズで前かがみになりながら、30秒ほどかけてゆっくり立つ
着圧タイツやソックスを着けて生活してみる
ただし、横になっているときや就寝中には外しましょう。
起立性調節障害の治し方③本人が過ごしやすい環境を整えるために

信頼できる医師を見つける
まずは信頼できる医療機関で起立性調節障害の正しい診断を受け、現在の体と心の状態や治療方針について相談し、継続的に治療を受けましょう。
周囲の理解を得る
起立性調節障害と診断された場合、怠け・やる気の問題ではなく身体の病気であることや、現在の症状、取り組んでいる治療などについて、家族・友人・学校などに説明し、理解が得られると良いでしょう。
過度なストレスを避ける
周囲が起立性調節障害のメカニズムや病因を正しく理解した上で、本人をむやみに責めず、過ごしやすい環境を整えることは、治療につながります。
室温が高いところは避ける
温度が高いと血管が開くほか、脱水になりやすくなります。このため血圧が下がりやすくなり、起立性調節症状の症状が悪化することが多いです(このため起立性調節障害は、夏に悪化しやすいと言われています)。
室温や衣類の調節を行い、気温の高い環境をなるべく避けましょう。
睡眠リズムを整える
睡眠と覚醒のリズムを整えることも、起立性調節障害の治療には有効です。
就寝直前はスマホのブルーライトを避ける、眠くなくても9時~11時には床につく、といった工夫が挙げられます。
起立性調節障害の治し方④血圧を上げる適切な「薬物療法」

昇圧剤
- ミドドリン
- アメジニウム
必要に応じて薬が処方される場合もありますが、薬だけでは効果が少なく、生活習慣の改善や環境の調整なども行なった上で内服するのが効果的といわれています。
βブロッカー
- ブロブラノロール(体位性頻脈症候群(POTS)タイプのみ)
心臓の交感神経のβ受容体というところをブロックし、心拍数の増加を抑えます。
重症の場合や、医師が必要と判断した場合には、向精神薬(脳に作用し、精神の安定をもたらす薬)や漢方薬が処方されることもあります。
起立性調節障害が良くなっていくきっかけ
起立性調節障害は、本人の年齢が16~17歳と増していき、身体機能が発達していくにつれ、症状が軽減していくことがほとんどといわれています。
親御さんは、治すことを焦らず、起立性調節障害に対する理解と、ご本人の生活のためのサポートを継続することが理想的です。
子どもの起立性調節障害に対して、親ができること
起立性調節障害に対して、家庭での親御さんの対応は重要なものです。
まずは、信頼できる医療機関で正しい診断を受けましょう。
起立性調節障害と診断された場合は、起立性調節障害が「身体の病気」であることを理解し、この記事で紹介したような正しい知識を持って、焦らず対応していくことが理想的です。
また、医療機関や学校関係者とともに適切な環境を整えていくことで、より効果的なサポートに取り組むことができます。
そこで、ここでは親御さんができることを5つご紹介します。
子どもの話をちゃんと聞く(傾聴する)、対話する

症状の特徴から、子どもは「怠けている」と誤解されたり、叱責されたりすることも少なくありません。
親御さんも、子どもを心配するあまり、強い口調になってしまったり、登校を強要したり、否定や反論、矢継ぎ早の質問をしたりしてしまうこともあるかもしれません。一方で、そうした態度の大人たちと接していくうちに、子どもの自己否定感は低下し、「相談しても無駄だ」「わかってもらえない」と感じて、どんどん追い詰められてしまいます。
子どもに対して、言いたいこと、伝えたいことはたくさんあると思います。子どものことを心配し、将来を感じているからこそのお気持ちではないでしょうか。
一方で、子どもの側にも、口に出せないだけでさまざまな思いがあるかもしれません。親には言わなくても、自分に不甲斐なく感じて、自信を失い、自分のことを強く責めている子どもは少なくありません。「自分でもどうにかしたいのに、どうしていいかわからない、どうすることもできない」と苦しんでいることもあります。
こうしたことを考えると、子どもに対して言いたいことを、時には親側がぐっとこらえて、子どもの話しをただひたすら聞く機会があっても良いかもしれません。
もちろん、親御さん自身の考えを子どもに伝えることも重要です。その場合、できるだけ怒りや悲しみといった感情を交えず、淡々と伝える方が、お互いの関係性を悪くしないでしょう。
姿勢や口調を合わせて対話する
また、子どもの姿勢や口調に合わせて会話するというテクニックもあります。
子どもが寝ているのなら、顔の高さが合うように座って話してみたり、子どもがゆっくりとした口調で話しているのなら、同じペースでゆっくり話してみるなどしても良いでしょう。
親御さんが「いつでも聞く」「あなたの存在を受け入れている」という姿勢を示し続けることができれば、それだけで本人の安心感や安全感につながり、回復の第一歩となることがあります。
親御さんが一方的に「正しい回答を示す」のではなく、子どもの話に耳を傾け、「自分のことをわかろうとしている」と子どもが感じることができる、双方向的な対話が理想的です。
安易に登校を催促しない
登校についても、無理に催促しないほうが良いでしょう。
中等症や重症の場合には、起立性調節障害の症状のために、起床そのものが困難になることがあります。
このため、朝に無理やり起こすことも逆効果です。
また、記憶力や思考力、集中力の低下のため、学校生活や勉強そのものに集中できなくなることもあります。
時には、放っておく

一方で、思春期の子どもが、親の干渉を嫌がることはよくあることです。
思春期の子どもに「親にしてもらって良かったことは?」と聞いてみると「放っておいてもらったこと」と答えが返ってくることもあります。
「依存」と「対話」という相反する感情を親に対して抱く、思春期ならではの難しさもありますが、親御さんが思っている以上に子どもは考え、大きく成長しています。時には、手や口を出さずに、ご本人を見守り、子どものペースに思いっきり合わせてサポートすることも必要です。
子どもとの関係がぎくしゃくすることもありますが、親が子どもの味方であり続けるうちに、良い方向に向かっていくことは少なくありません。
医療機関での診断を先延ばしにしない・けれども無理には受診させない

子どもにとって、原因不明の身体の不調は、長い不安が続きます。
身体の不調の原因がわかると、お子さん自身にも安心感をもたらします。早期に診断がつくことで、適切な治療に向けた準備を進められるきっかけとなります。また、起立性調節障害の悪化を防ぎ、回復を促すことにも繋がります。
さらに、起立性調節障害の診断書があれば、学校の先生にも理解をしてもらいやすくなります。結果的に、親御さん自身も理解が進み、適切な治療に向けて家庭と学校での環境整備を進めることができます。
起立性調節障害が疑われる場合は、起立性調節障害の診断が可能な医療機関での早期の診断をご検討ください。そして、医師と連携して適切な治療まで、起立性調節障害に悩まされている子どもの理解・サポートを進めることがとても重要になります。
ただし、本人が医療機関の受診を嫌がることも、珍しくはありません。その場合に、本人を強く説得・叱責したり、無理に引きずっていったりすることは、逆効果です。
家庭の中での本人の安心感があることや、家族の信頼関係を保つことは、起立性調節障害の診断をつけること以上に重要です。
もし本人が受診したがらない場合は、先に述べた通り、傾聴や、本人との対話を重要視することをおすすめします。医療機関に受診したくない本人の気持ちに耳を傾けること、焦ったり感情的になったりせずに親の考えを淡々と伝えること、時として放っておいてそっと見守ることが重要だと考えます。
ご本人と親御さんの方が無理なく、家庭でできる範囲の生活習慣改善にチャレンジしてみるのも良いでしょう。その場合も、親御さんが一方的に提案するのではなく、本人のやってみたい気持ちや、納得感を大事にできると良いですね。また、後述の通り、医療機関以外の専門家への相談や、起立性調節障害の当事者の会と繋がりを持つという方法もあります。
そうした中で、いつしか本人の意思での受診につながったり、受診の必要性がなくなるくらいの回復につながれば、理想的といえるでしょう。
専門機関と連携する

親御さんだけで起立性調節障害の課題を抱え込まないよう、必要な専門機関と協力してサポートする方法もあります。
専門の人に相談することで、新たな気づきや、適切なアドバイスをもらうことができるかもしれません。
各市区町村の教育委員会では、「教育センター」や「教育相談所」「教育支援センター(適応指導教室)」などの名称で、生徒に関する教育相談を行うための窓口を設けています。
また、厚生労働省による児童相談所や保健所、精神保健福祉センターなどで相談することもできます。ただし、どんな相談をどのように請け負っているかは各所で異なるため、事前に相談が可能か問い合わせされることをおすすめします。
さらに、起立性調節障害の学生が中心となって、当事者が集まる場所をつくる「起立性調節障害の子どもたちの会」という活動もあります。
お子さんにとっては、当事者同士の方がコミュニケーションしやすいというケースもありますので、興味のある方はぜひご覧ください。
学校と十分に連絡をとる

起立性調節障害は、親御さんだけでなく、学校の先生など近くにいる大人の理解が非常に重要です。
そのため、学校は起立性調節障害の理解を深め、下記を始めとするサポート体制を整える必要があります。
- 長時間の立位を避ける
- 授業中も飲水を許可する
生徒さんにとって、学校は集団行動の中で学んでいく協調性・多様性などの価値観の創出ができる場所です。
朝起きられない症状で悩む生徒には、朝起きて学校へ登校できない日の勉強の遅れや学習面のフォロー、「みんなが学校へ登校している中、自分は登校できない」ことでの自己肯定感の低下や自信喪失などに対するメンタル面のフォローなど、個人の実態に合わせた柔軟なサポートが不可欠です。
起立性調節障害のよくある質問
起立性調節障害について、よくある5つの質問に回答します。
起立性調節障害の子どもに最適な進路

小学校や中学校は義務教育ですので、学校に行けない場合でも卒業は可能です。
しかしながら、高校はそうではありません。全日制高校では規定の出席日数を満たすことが、進級や卒業の条件となります。
そのため、朝からの登校や毎日の学校通いが起立性調節障害のお子さんにとって難しい場合、全日制高校は克服すべきハードルが高くなるでしょう。
ただし、そのようなお子さんにも対応した学校は存在するため、安心してください。
学校の起立性調節障害への理解とサポート

通信制高校やサポート校は、通学と自宅学習の選択が可能なため、「高校には行きたいけれど、朝起きたり毎日登校するのが難しい」というお子さんにとって、選択しやすい教育システムとなっています。
通信制高校やサポート校には、以下のような特徴があります。
- 週5日通学から週1日通学の選択が可能
- 午後のみの登校も可能
- 個々の生徒に合わせたカリキュラムが提供される
- 基礎学力向上のための指導が行われている
- 個別指導や少人数クラスでの授業が行われる
- 個別のカウンセリングやメンタルケアが行われる
- 通信制高校でも大学進学が可能
たとえば、通学頻度を選べる学校では、「週5日通学して規則正しい生活を送りたい」とか、「自分のペースで週1日通学したい」といった要望に応じてコースを選択できます。
学習面で不安を抱えている場合、基礎学力を強化する指導を行う学校であれば安心です。
また、精神的なサポートも提供している学校もありますので、適切なサポートを受けながら高校卒業を目指せます。異なる特長を持つ学校が存在するため、お子さんに適した学校を選ぶことが可能です。
青楓館高等学院なら起立性調整障害で悩む生徒も活躍できます!

青楓館高等学院では、全日制と同じ高校卒業資格を取得できることはもちろん、総合型選抜のプロによる大学合格にも力を入れています。
教育理念は「個性を尊重し、可能性を伸ばす」です。
週1回の1on1や月1回のゲスト講演、インターンや学校運営などを行っております。自分を知ることから社会と繋がるまでを叶えることが当学院の強みです。
そして、総合型選抜で日本トップクラスの大学合格実績があります。(関関同立・早慶上智・GMARCH)
さらに、起立性調整障害で悩む生徒を尊重したキャリア育成を実施しています。高校卒業を目指す方から、社会で活躍したい方まで。キャリア育成は青楓館高等学院にお任せください。
青楓館高等学院では、高校生活はもちろん将来のサポートまで行っています。
説明会やオープンキャンパス、個別相談会は随時開催しております。もっと青楓館高等学院を知りたい方は、お気軽にご連絡ください。
支援事例
K.Aさん

元々、目立ちたがり屋な性格なので、活発で好奇心旺盛なタイプです。
高校1年生の時に、「寝れない」ことに違和感を感じるようになりました。夜寝れずに、寝るのは明け方になってからというように生活習慣が乱れていきました。それから、全日制の高校に通うことができなくなりました。
友人の紹介で、青楓館に来てから学校楽しくて無理矢理10時から学校に行くようになったので疲れて寝れるようになったのでだいぶ治ってきました!でもたまに精神状態が乱れたら、寝れなくなります笑
学校を変えてから全部が変わって、価値観も全て180度変わりました。人との接し方とか自分に対して、もっと知りたくなって考えるようになりました!
Y. Kさん

妥協が許せず、理想がとてつもなく高い性格です。時にストレスを吐き出せず、抱え込んでしまうこともあります。
徐々に朝から起きれなくなり、だんだん学校に遅刻する日が増えていったことがきっかけで起立性調節障害に気づきました。今思えば、電車に酔いやすくなったり、めまいや耳鳴りが多くなったことも前兆としてあったように思います。
それから、起立性調節障害を克服するために、水をたくさん飲むように心がけました。元々、水を飲む量が少なすぎたとも感じています。あとは、とにかく気持ちを楽にさせることを意識しました。ストレスをなくすことに全てを注ぎました。
私がした3つのこと
- 引きこもりたいってなったら何も考えずにベットにうずくまって、外の世界と遮断する感じでぼーっとする(引きこもりたいっていう気持ちは悪いことじゃない、押さえ込むべきじゃない)
- 相談する。思うことを口に出す。
- 心の余裕を持たせるために趣味を作る、楽しむ。
第一優先は自分であり、自分を知ることはとても大切です。自己分析のすべを磨き、人生を上手い塩梅で生きていくように意識しながら、何事も取り組めるようサポートしてくれる学校に入学できてよかったと思います。
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参考リンク
- 日本小児心身医学会(https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/)
- 起立性調節障害サポートグループ(https://www.od-support.com/)