起立性調節障害に対して、家庭での親御さんの対応は重要なものです。
起立性調節障害と診断された場合は、起立性調節障害が「身体の病気」であることを理解し、この記事で紹介したような正しい知識を持って、焦らず対応していくことが理想的です。
まずは、信頼できる医療機関で正しい診断を受けましょう。
また、医療機関や学校関係者とともに適切な環境を整えていくことで、より効果的なサポートに取り組むことができます。
起立性調節障害は、本人のやる気や気合いで乗り越えられる病気ではありません。親御さんと学校の先生と医師とが連携して、起立性調節障害に悩まされている方の理解・サポートが充実することが重要です。
そこで、この記事では、医師の監修のもと起立性調節障害で親御さんができることを5つ紹介します。
- 起立性調節障害で悩んでいる方
- 起立性調節障害の子どもを持つ親御さん
- 起立性調節障害の生徒を持つ先生
最後には、起立性調節障害のサポート事例までご覧いただけます。ぜひ、最後までご覧ください。

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起立性調節障害で親ができること①
子どもの話をちゃんと聞く(傾聴する)、対話する

症状の特徴から、子どもは「怠けている」と誤解されたり、叱責されたりすることも少なくありません。
親御さんも、子どもを心配するあまり、強い口調になってしまったり、登校を強要したり、否定や反論、矢継ぎ早の質問をしたりしてしまうこともあるかもしれません。一方で、そうした態度の大人たちと接していくうちに、子どもの自己否定感は低下し、「相談しても無駄だ」「わかってもらえない」と感じて、どんどん追い詰められてしまいます。
子どもに対して、言いたいこと、伝えたいことはたくさんあると思います。子どものことを心配し、将来を感じているからこそのお気持ちではないでしょうか。
一方で、子どもの側にも、口に出せないだけでさまざまな思いがあるかもしれません。親には言わなくても、自分に不甲斐なく感じて、自信を失い、自分のことを強く責めている子どもは少なくありません。「自分でもどうにかしたいのに、どうしていいかわからない、どうすることもできない」と苦しんでいることもあります。
こうしたことを考えると、子どもに対して言いたいことを、時には親側がぐっとこらえて、子どもの話しをただひたすら聞く機会があっても良いかもしれません。
もちろん、親御さん自身の考えを子どもに伝えることも重要です。その場合、できるだけ怒りや悲しみといった感情を交えず、淡々と伝える方が、お互いの関係性を悪くしないでしょう。
姿勢や口調を合わせて対話する
また、子どもの姿勢や口調に合わせて会話するというテクニックもあります。
子どもが寝ているのなら、顔の高さが合うように座って話してみたり、子どもがゆっくりとした口調で話しているのなら、同じペースでゆっくり話してみるなどしても良いでしょう。
親御さんが「いつでも聞く」「あなたの存在を受け入れている」という姿勢を示し続けることができれば、それだけで本人の安心感や安全感につながり、回復の第一歩となることがあります。
親御さんが一方的に「正しい回答を示す」のではなく、子どもの話に耳を傾け、「自分のことをわかろうとしている」と子どもが感じることができる、双方向的な対話が理想的です。
安易に登校を催促しない
登校についても、無理に催促しないほうが良いでしょう。
中等症や重症の場合には、起立性調節障害の症状のために、起床そのものが困難になることがあります。
このため、朝に無理やり起こすことも逆効果です。
また、記憶力や思考力、集中力の低下のため、学校生活や勉強そのものに集中できなくなることもあります。
起立性調節障害で親ができること②
時には、放っておく

一方で、思春期の子どもが、親の干渉を嫌がることはよくあることです。
思春期の子どもに「親にしてもらって良かったことは?」と聞いてみると「放っておいてもらったこと」と答えが返ってくることもあります。
「依存」と「対話」という相反する感情を親に対して抱く、思春期ならではの難しさもありますが、親御さんが思っている以上に子どもは考え、大きく成長しています。時には、手や口を出さずに、ご本人を見守り、子どものペースに思いっきり合わせてサポートすることも必要です。
子どもとの関係がぎくしゃくすることもありますが、親が子どもの味方であり続けるうちに、良い方向に向かっていくことは少なくありません。
起立性調節障害で親ができること③
医療機関での診断を先延ばしにしない・けれども無理には受診させない

子どもにとって、原因不明の身体の不調は、長い不安が続きます。
身体の不調の原因がわかると、お子さん自身にも安心感をもたらします。早期に診断がつくことで、適切な治療に向けた準備を進められるきっかけとなります。また、起立性調節障害の悪化を防ぎ、回復を促すことにも繋がります。
さらに、起立性調節障害の診断書があれば、学校の先生にも理解をしてもらいやすくなります。結果的に、親御さん自身も理解が進み、適切な治療に向けて家庭と学校での環境整備を進めることができます。
起立性調節障害が疑われる場合は、起立性調節障害の診断が可能な医療機関での早期の診断をご検討ください。そして、医師と連携して適切な治療まで、起立性調節障害に悩まされている子どもの理解・サポートを進めることがとても重要になります。
ただし、本人が医療機関の受診を嫌がることも、珍しくはありません。その場合に、本人を強く説得・叱責したり、無理に引きずっていったりすることは、逆効果です。
家庭の中での本人の安心感があることや、家族の信頼関係を保つことは、起立性調節障害の診断をつけること以上に重要です。
もし本人が受診したがらない場合は、先に述べた通り、傾聴や、本人との対話を重要視することをおすすめします。医療機関に受診したくない本人の気持ちに耳を傾けること、焦ったり感情的になったりせずに親の考えを淡々と伝えること、時として放っておいてそっと見守ることが重要だと考えます。
ご本人と親御さんの方が無理なく、家庭でできる範囲の生活習慣改善にチャレンジしてみるのも良いでしょう。その場合も、親御さんが一方的に提案するのではなく、本人のやってみたい気持ちや、納得感を大事にできると良いですね。また、後述の通り、医療機関以外の専門家への相談や、起立性調節障害の当事者の会と繋がりを持つという方法もあります。
そうした中で、いつしか本人の意思での受診につながったり、受診の必要性がなくなるくらいの回復につながれば、理想的といえるでしょう。
起立性調節障害で親ができること④
専門機関と連携する

親御さんだけで起立性調節障害の課題を抱え込まないよう、必要な専門機関と協力してサポートする方法もあります。
専門の人に相談することで、新たな気づきや、適切なアドバイスをもらうことができるかもしれません。
各市区町村の教育委員会では、「教育センター」や「教育相談所」「教育支援センター(適応指導教室)」などの名称で、生徒に関する教育相談を行うための窓口を設けています。
また、厚生労働省による児童相談所や保健所、精神保健福祉センターなどで相談することもできます。ただし、どんな相談をどのように請け負っているかは各所で異なるため、事前に相談が可能か問い合わせされることをおすすめします。
さらに、起立性調節障害の学生が中心となって、当事者が集まる場所をつくる「起立性調節障害の子どもたちの会」という活動もあります。
お子さんにとっては、当事者同士の方がコミュニケーションしやすいというケースもありますので、興味のある方はぜひご覧ください。
起立性調節障害で親ができること⑤
学校と十分に連絡をとる

起立性調節障害は、親御さんだけでなく、学校の先生など近くにいる大人の理解が非常に重要です。
そのため、学校は起立性調節障害の理解を深め、下記を始めとするサポート体制を整える必要があります。
- 長時間の立位を避ける
- 授業中も飲水を許可する
生徒さんにとって、学校は集団行動の中で学んでいく協調性・多様性などの価値観の創出ができる場所です。
朝起きられない症状で悩む生徒には、朝起きて学校へ登校できない日の勉強の遅れや学習面のフォロー、「みんなが学校へ登校している中、自分は登校できない」ことでの自己肯定感の低下や自信喪失などに対するメンタル面のフォローなど、個人の実態に合わせた柔軟なサポートが不可欠です。
起立性調節障害で親ができること5選 まとめ
起立性調節障害とは、立ち上がった時にめまい、頭痛、動悸などの症状が出る身体の病気です。
血管や心臓といった循環器系の自律神経の調節に不調をきたすことが主な原因で、思春期前後に多く見られます。
朝起きることが難しかったり、起床時に体調不良を感じたりする起立性調節障害は、まだまだ認知度が低いことから、「怠けなのではないか」「気持ちの問題じゃないか」「サボっているだけだよね」と理解されず、その結果本人が苦しみ、学校生活に支障をきたすこともあります。
日本小児心身医学会によると、軽症例を含めると中学生の10人に1人が起立性調節障害を持ち、不登校の約30~40%が起立性調節障害を有しているとされています。実に多くの子どもたちが、この病気で悩んでいると言えるのではないでしょうか。
起立性調節障害で苦しむ子どもが安心して日々を過ごすためには、親御さんだけでなく、学校の理解も重要となります。

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参考リンク
- 日本小児心身医学会(https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/)
- 起立性調節障害サポートグループ(https://www.od-support.com/)

