世界に”Tankyu”を発信して感じた、日本の和の精神の価値　炭谷俊樹さんインタビュー後編

こんにちは！「子どもの未来を守る」をスローガンにした通信制サポート校の青楓館高等学院による、教育者・経営者インタビュー第二弾！

前編はこちら：必要なのはイグナイター。日本初の探究オルタナティブスクール３０年間の軌跡と今後の展望

引き続き、炭谷俊樹さんに、インタビューをして参りました。

炭谷さんは、約30年前に日本で最初の探究的なオルタナティブスクールを立ち上げながら、海外の留学生を多数受け入れる神戸情報大学院大学の学長など様々な活動を通して探究的な学びの概念や環境を広めてこられました。

今回の後編では、炭谷さんが神戸情報大学院大学でアフリカ、中東、アジアなど100カ国以上から多様な留学生も受け入れ、Tankyuを世界に発信をする中で感じた、日本のポテンシャルについて伺いました。

今回お話を聞くのは：探究推進機構　代表理事/神戸情報大学院大学学長 　炭谷　俊樹さん

青楓館高等学院とは

3年前に設立された明石にある通信制サポート校。2025年10月現在の生徒数は240名です。個性を重視し、生徒全員が毎週1on1をしたり、卒業決定率100%・進路決定率99.5%と、出口支援を行うなどを特徴を持ちながら「社会に開かれた学校」として、PBLや社会人ゲストスピーカーが毎月訪れるなど、学校と社会のギャップをなくすことにも取り組んでいます。

現在２校目の芦屋校立ち上げに向け、クラウドファンディング中！

戦うのではなく共に創る：日本の和の精神が持つポテンシャル

織田：ここまで、日本の課題側にフォーカスしてお話を伺ってきましたが、ここから、日本の持つ可能性についてもお伺いさせてください。

炭谷さんは神戸情報大学院大学の学長として、アフリカ、中東、アジアなど100カ国以上から留学生を受け入れ、「Tankyu Practice（探究実践）」を開発・提供しながら、探究的なマインドの醸成をされていたり、
海外でも講演や登壇などを通して”Tankyu”の概念を広げられていると認識しています。

世界に広く発信する中で、日本の良さについても感じておられることがあれば、教えていただけないでしょうか？

炭谷：実は私自身、日本の哲学や精神性には、世界が必要とするものがたくさん眠っていると感じています。

私は、神戸情報大学院大学の入学初日には生徒たちに毎年必ず
「互いの違いを尊重し、強みを活かし合って協力して新しいものを創ることが重要である」
という話をします。

「とくに神戸情報大学院大学の中や、今後皆さんの活躍していく世界では、イスラム教、キリスト教、仏教徒など宗教も違い、言葉も違う中で、最初は互いに違和感を感じることも多いでしょうが、
しっかり聞き合い、対話する中で理解が深まり、仲良くなり、刺激し合うようになります。」

これは、日本の持つ和の精神の中でも重要な要素であると思っていまして、探究的な学びをする上でも、共に創る発想が学びの土台になると感じています。

そして、神戸情報大学院大学に留学してくれていた優秀生が卒業の際にスピーチをしてくれたのですが、その際にも、入学式の時の話が日本での学生生活の際の心の指針になったという話をしてくれました。

海外から遠く日本の地に降り立ち、心配事がある中でも、「戦うのではなくみんな仲間である」という安心感があったからこそ、研究や勉学に打ち込めた。

さらに、「共に創る」ために、自分自身の頑張りが社会や身の回りの方々向けにどう貢献できるのかと考えるようになったり、
そのマインドを持った人たち同士であれば、互いに刺激をしあい、自分の予想を超えるような学びも生まれた、

ということも伝えてくれました。

入学初日に話したことがここまで生徒の心に残り、ここまで噛み砕いて自分のものにしてもらっていることに驚きました。

波風を立てないことは安心の場にもつながる。日本人の和の精神と相互承認

織田：日本の考え方が異国の地から来た方の心の支えにもなるのは、とても素敵ですね！

炭谷：今後、世界的にも、国を超えて学びや仕事をする人はどんどん増えてくると思います。

そんな時に、一人でアウェイの環境で、怯えながら戦って生きるより、心理的に安全な場で仲間同士で切磋琢磨する方が、幸せなのではないかと思います。

織田：日本国内でも、この「共に創る」考えに共感する人は最近増えているそうですね。

高度経済成長の時の日本は、高収入、高身長、高学歴などの3高がかっこいい、というような蹴落としてでも自分を高めるような風潮もあったように思いますが、最近は経済が停滞気味なこともあり、また日本の持つ和の精神に注目が集まっている気がしています。

炭谷：日本が、偏差値などの数字で物事を計るようになったのは第二次世界大戦後だと思います。
それまで、特に江戸以前は、もっと人間関係重視をしていました。

波風立てない、と聞くと消極的な印象を受けることが多いですが、これは互いを生かし合い、互いに心理的に安全な場を作ることでもあると思います。

だからこそ、日本はこれまでも、違う思想や文化も、それを否定するのではなく受け入れ、ローカライズして取り入れることができたのだと思います。

神社仏閣で初詣をしたりお葬式をしながら、キリスト教系の結婚式を行い、クリスマスもハロウィンもお盆もある。こんなにも多様な文化が自然と生活に取り入れられ、混ざり合っている国は日本ぐらいだと思います。

織田：確かに、空気を読むというのは同調圧力的な生きづらさにつながるケースもありますが、言葉を介さずとも相手のことを慮る、という側面もありますね。

炭谷：はい。西洋の思想はとてもロジカルで良いですが、
ロジックが通っていれば許されたり、資本が多い者が正義となる資本主義のベースでは、強いものだけが勝ちますし、その強さを振り翳してやりたい放題やるような「刀を振り回す危ない人」が出てきてしまうと感じています。

でも、そうやってロジカルに、強くあることが、自分や周囲の幸せにつながるかというと必ずしもそうではなく、お金はあるのに不幸せな人なども社会で多くみてきました。

そんな中で、人との関係性をベースにした日本の和の精神や、日本の持つ相互承認の考え方こそ、世界中どこでも、人間が幸せに生きる上でキーとなるのではないかと感じています。

神戸情報大学院大学の留学生も、私の入学時の言葉を聞くことで、自分自身のアイデンティティを受け入れてくれて、それを活かす道があるのではないか、という希望を持てたと言ってくれています。

心理的安全性は、探究をする上での土台

炭谷：異文化同士の場に限らず、小学生などのこどもに置き換えた場合でも、心理的安全性は探究的な学びに欠かせません。

大前提、探究は、興味関心から始まる学びですが、怒られたり、何をしてもダメだと言われると、探究の種である好奇心を解放してあげることができません。

逆に、認めてあげて承認をすることで、好奇心と探究心が芽生えるし、そうすることで自然と自分で工夫をして学ぶようになる。

心理的に安全な場があるからこそ、その人の持っているものも、引き出すことができる。

和の精神はこういった心理的安全な場を作ることができる哲学だと思い、それが今後、世界で幸せに生き抜く人を増やすために、日本が世界に提案・貢献できる考え方だと思います。

探究的なマインドを持てると、それだけで人生が楽しい

織田：炭谷さんがコンサル時代に感じた「お金があれば幸せなのか？」という問いに対して、日本の精神性が1つの答えになっていますね。
経済が停滞気味な中でも、幸せに生きるためのヒントが日本にあるのは、とても希望を感じます。

炭谷：そもそも、探究的に生きることができれば、多くの人は幸せを感じるのではないかと思います。だからこそ、世界にもTankyuの概念を広めてきました。

自分の興味や関心を元に問いが出て、そこから学び、また問いが出る。
好奇心の赴くままに、この世界の中で旅や探検をする。

そのためであれば、ゲームも活用しても良いと思っています。

子供達が興味を持っているゲームをきっかけに、そのゲームの中で防災関連の遊びを入れることで、防災に興味を持った生徒もいます。

新しい時代には新しい時代なりのきっかけがあるので、そこが社会と繋がり、一度探究のサイクルが回り始めたら、あとはどんどん勝手に学んでいく。

子どもも大人も、1人でも多くがこのサイクルに入ることができたら、幸せだと感じる人は増えると思います。

織田：僕もそう感じます！そのためにも、探究イグナイターが増えてほしいですね。
炭谷さんからみて、そのほか、日本の中で希望を感じる取り組みなどはありますか？

炭谷：正直、青楓館高等学院の提供している教育には希望を感じます。

言わされてるみたいに聞こえてしまうかもしれませんが(笑)

代表の岡内さんと学院長の藤原さんが青楓館を立ち上げたのは、岡内さんが28歳、藤原さんも30大前半の時。

若い人たちがこういうことをしていること自体がすごいと思いますし、提供している教育も、プロジェクトベースドラーニングを重視していたり、それぞれの個性を活かした1on1に力を入れている点など、

青楓館について知れば知るほど、今の時代にあった新しい学びのスタイルを提供していると感じます。

こういった学校が増えてほしいし、中学3年生までが通えるラーンネットエッジの生徒にとっても、その先の良い選択肢になると思う。

奇跡的に、同じ兵庫県でこういう学びが提供されているので、今後もぜひ連携して、神戸探究ラインなどを作れたら嬉しいです。

織田：ちょうど神戸市のAI事業でも、炭谷さんやAI教育に強いAIUEOさんたちチームが今年受託をされましたが、産学官民連携していけそうで僕もワクワクしています！引き続き、よろしくお願いします。

最後に

2回にわたって、炭谷さんにインタビューをしてまいりました。

30年前から探究的な学びの場を提唱され続け、国内外に発信。そして今もなお、探究イグナイターを増やすべく新しい取り組みを開始されるその姿勢には頭が上がりませんが、

子どもの未来を守るべく、引き続き皆さんと連携し、より良い環境にしていきたいと思います。

前編はこちら：必要なのはイグナイター。日本初の探究オルタナティブスクール３０年間の軌跡と今後の展望

炭谷さんのご活動について

・ラーンネットグローバルスクール
・神戸情報大学院大学
・探究インテリジェンスセンター
・探究推進機構（ComingSoon）

青楓館のクラウドファンディングは10/31まで！

最後までお読みいただき、ありがとうございました！

青楓館は現在、2校目である芦屋校開校に向け、2025年10月31日までクラウドファンディング実施中！

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インタビューをした人：青楓館高等学院　経営企画　織田

新卒で入った会社で自分自身の個性や特徴を活かすことができず、3年間の自分探しの末、会社を辞めてオーストラリアでアーティストとして絵を売る生活を開始。その後、日本に帰国してカルチュア・コンビニエンス・クラブでの新規事業担当者や神戸市役所のイノベーション専門官を経て、「より多くの人々が個性を生かして過ごせる世界」を目指す中で、2025年9月から青楓館の経営企画としてジョイン。ポケモンカードで全国大会に挑戦中。

前編はこちら：必要なのはイグナイター。日本初の探究オルタナティブスクール３０年間の軌跡と今後の展望