「子どもが学校に行けなくなってから、仕事を続けるのが限界に近い」そう感じている保護者は、決して少数派ではありません。
近年、子どもの不登校をきっかけに保護者が仕事を辞める、あるいは休職・時短勤務に切り替えるケースが「不登校離職」という言葉で語られるようになりました。
この記事では、複数の調査データをもとに「不登校離職率」の実態を整理し、保護者が離職に追い込まれる背景、そして離職を防ぐためにできることを、通信制高校という選択肢も交えて解説します。
不登校離職とは?
不登校離職とは、子どもの不登校・行き渋りをきっかけに、保護者が仕事を辞める、あるいは休職・時短勤務・雇用形態の変更など働き方を大きく変えざるを得なくなる状態を指します。
朝、子どもが起きられるか、学校に行けるか、一人で留守番できるか。
そうした先の読めない判断を毎日積み重ねるうちに、遅刻や早退が増え、有給休暇を使い切り、やがて「辞める」という選択に至る保護者が少なくありません。
もともとは支援の現場から生まれた言葉ですが、近年の調査によって、その実態が数字として可視化されつつあります。
最新調査でわかった「不登校離職率」の実態
母親の約5人に1人が退職、父親との差は約30倍
NPO法人キーデザインが2026年に実施した「不登校離職実態調査2026」(全国46都道府県・1,234件回答)によると、不登校・行き渋りによる仕事への影響で母親の19.93%が「実際に退職した」と回答した一方、父親の退職は0.67%にとどまり、約30倍の差が生じています。
不登校対応の負担が母親側に大きく偏っている実態が、数値として明確に表れています。
仕事との両立が「大変だった」95.4%、「辞めたい」84.1%
同調査では、子どもの対応と仕事の両立が「やや大変」「かなり大変」「非常に困難」と回答した保護者が95.4%にのぼり、就業していた保護者のうち84.1%が「仕事を辞めたいと思ったことがある」と回答しています。
さらに注目したいのは、退職に踏み切った人(241件)よりも、有給休暇の消化・シフト削減・時短勤務への切り替え・一時休職など、何らかの形で勤務を縮小している人の方が約3倍多いという点です。
「辞めていないから大丈夫」なのではなく、水面下で働き方がすでに大きく変わっている家庭が非常に多いということです。
心身への影響と経済的な打撃
母親の93.9%が、継続的なストレスや不安、日常生活に支障が出るほどの負担、心身の不調、医療機関の受診が必要な状態のいずれかに該当すると回答しています。
また、収入が減った家庭は50.3%、支出が増えた家庭は79.7%にのぼり、収入減と支出増が同時に押し寄せる「二重の経済的打撃」に直面する家庭も多く見られます。
別調査でも「4人に1人」が離職・休職
東洋経済オンラインが報じた調査でも、不登校の子を持つ保護者の約4人に1人が離職・休職を経験し、約8割が仕事に何らかの影響を受け、約4割が収入減を経験していると報じられています。
調査主体や対象は異なるものの、複数の調査で「保護者の4〜5人に1人が離職に至る」という近い水準の結果が示されており、これが一部の家庭だけの問題ではないことがうかがえます。
なぜ保護者は「辞めたい」のではなく「辞めざるを得ない」のか
不登校離職の背景には、いくつかの要因が重なっています。
① 予測できない朝の不確実性
子どもが今日学校に行けるかどうかは、当日の朝にならないとわからないことが多く、事前に仕事の調整をすることが難しいという声が多く聞かれます。
② 家庭でケアを丸抱えする構造
子どもを一人で留守番させることへの不安、生活リズムの乱れへの対応、子どもの荒れた言動への対応など、家庭内でのケアが保護者、特に母親に集中しがちです。
③ 職場の理解不足
「育て方が良くないのでは」といった心無い言葉や、遅刻・欠勤のたびに謝罪を重ねる精神的な負担が、離職の決断を後押ししてしまうケースも報告されています。
④ 夫婦間で相談できない孤立
ベネッセ教育情報サイトが紹介した調査では、子どもの不登校について夫婦間で「満足に相談できている」と回答したのは22.6%にとどまり、多くの母親が家庭内で孤立を深めている実態が明らかになっています。
こうした要因が重なり、保護者は「仕事を辞めたい」のではなく、追い詰められた末に「辞めざるを得ない」状況に置かれてしまうのです。
離職する前にできること
離職は、収入だけでなく、社会とのつながりや自分自身の居場所を手放すことにもつながります。
決断を急ぐ前に、次のような選択肢を検討する余地がないか確認してみましょう。
職場に早めに相談する
時短勤務、シフト調整、在宅勤務、介護休暇・休業制度の活用など、退職以外の選択肢を一度職場に相談してみる
子どもの居場所を家庭の外にもつくる
フリースクールや教育支援センター、通信制高校など、家庭以外に子どもが安心して過ごせる場所を持つことで、保護者が働き続けやすくなる
一人で抱え込まない
親の会やLINE相談窓口など、同じ立場の保護者とつながれる場を活用する
学校・自治体の支援情報を確認する
フリースクール利用への助成金制度など、自治体によって独自の支援策が用意されている場合がある
「仕事を続けながら子どもを支える」ためには、保護者だけで抱え込まず、外部の力を借りる視点が欠かせません。
子どもの「学びの場」を確保することが、保護者の離職防止にもつながる
不登校離職の大きな要因のひとつは、「子どもが日中どこにも所属していない」ことによる不安です。
裏を返せば、子どもが安心して通える学びの場・居場所があるだけで、保護者の負担は大きく軽減されます。
その選択肢のひとつが、通信制高校です。
通信制高校は、決まった時間に毎日登校する必要がなく、体調や気持ちの波に合わせて学習ペースを調整できるのが特長です。子ども自身が「行ける日に、行けるかたちで」学びを続けられる環境が整うことで、
- 子どもの日中の居場所ができ、保護者が「今日行けるかどうか」に一喜一憂しなくてよくなる
- 子ども自身が学びとつながり続けられることで、自己肯定感の回復にもつながる
- 保護者は仕事と子どものケアの両立を、より現実的な形で組み立てられるようになる
といった変化が期待できます。
青楓館高等学院では、不登校を経験した生徒や保護者からの相談を数多く受けてきました。
学習面のサポートだけでなく、生徒一人ひとりのペースに合わせた通学スタイル、保護者向けの相談体制も整えています。
「学校に行けない」ことをお子さん一人・保護者一人の責任として抱え込む前に、一度お気軽にご相談ください。
まとめ
不登校離職率に関する複数の調査から見えてくるのは、不登校がもはや「子どもだけの問題」ではなく、保護者の仕事・心身・家計、ひいては家庭全体に影響を及ぼす社会課題だということです。
- 母親の約5人に1人が離職を経験し、父親との差は約30倍
- 退職に至らずとも、約8割の保護者が仕事に何らかの影響を受けている
- 背景には、予測できない朝の不確実性、家庭でのケアの偏り、職場の理解不足、夫婦間の孤立がある
- 離職を防ぐには、職場への早めの相談と、子どもの「家庭以外の居場所」の確保が鍵になる
子どもの学びの場を確保することは、子ども自身のためだけでなく、それを支える保護者が「仕事も家庭も諦めない」ための土台にもなります。
ひとりで抱え込まず、まずは相談することから始めてみませんか。


