先生は「変わりました」と言うけれど……それでも、心配してしまう。そんな気持ちの理由について

子どもがすこしずつ動き出している。表情も明るくなってきたし、先生からは「すごく変わりましたよ」と言われる。それなのに、心配が消えない。そんな自分を、欲張りなのか、薄情なのかと責めてしまっている方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。

先に、現場の答えをお伝えしておきます。それが普通だそうです。子どもがどれだけ変わっても、ほとんどの親は、ずっと悩み続けています。

この記事では、なぜ心配が消えないのかを、構造から考えていきます。あらかじめ言ってしまうと、それは愛情の問題でも、子どもが変わっていないからでもありません。

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子どもが激変しても親の悩みは続く

入学して子どもが変わっていったら、親の悩みも軽くなっていくのでしょうか。保護者面談で多くの家庭と向き合ってきた、青楓館高等学院代表の岡内大晟さんに聞くと、答えは意外なものでした。

「『朝起きない』で悩んでいた我が子がどんどん変わっていって、プロジェクトを回せるようになって、見違えるほど変わっているのに、親御さんは悩み続けている」

悩みの中身は変わっていくのですが、「大丈夫なの、心配だよ」という気持ちそのものは、なかなか消えません。生徒はめっきり変わっているのに、お母さんは満足していない。そういうケースの方がむしろ多いのだそうです。では、その心配はいつ晴れるのか。

「全てが報われる瞬間は、卒業と大学合格です。そこでやっと、肩の荷がポンと下りる。それまでは、どれだけ生徒が変わっていても、インターンシップを始めた、プレゼン大会の全国大会に出た、という大きな結果が出ても心配が消えることはないですね…」

子どもがどれだけ変わっても、親の心配は卒業や進路の確定まで消えない。これが現場の実感です。これを読んで、がっかりする必要はありません。裏を返せば、心配が続いているのはあなたの家だけではない、ということでもあります。

変化がいちばん見えにくい場所に親は立っている

なぜ、こんなにも心配が消えないのでしょうか。理由のひとつは、変化の見える場所の問題です。

子どもの内側で起きている成長は、自信がついてきた、目的ができた、人との関わり方が変わった、というような、形のないものから始まります。それは本人にはわかりますし、日々プロジェクトや面談で接している先生にも見えます。ところが、家庭で見えるのはその断片です。家ではいつも通りゴロゴロしているようにしか見えないのに、学校では別人のように動いている、ということが実際に起こります。

心配が消えないのは、愛情が足りないからでも、子どもが変わっていないからでもなく、変化がいちばん見えにくい場所に親が立っているからです。先生の「変わりましたよ」に実感が追いつかないのは、当然のことなのですね。

親の安心は周囲に通じる物差しで測られる

もうひとつの理由は、物差しの問題です。象徴的な話があります。トビタテ!留学JAPANという、文部科学省が2013年に始めた留学支援のプログラムがあります。*1 選ばれるのは狭き門で、教育の世界では立派な実績です。ところが、と岡内さんは言います。

「トビタテ!留学JAPANは、文部科学省がやっている事業ですから、本当にすごいものなんです。ただ、親は『トビタテ』を知りません。『トビタテにうちの子が受かった』とママ友の間で言ったところで、『何それ』で終わってしまうんです」

それよりも、誰もが名前を知っている大学に受かった、の方が伝わる。難易度の上下とは関係なく、周囲にひとことで通じる物差しの方が、親の安心の物差しになりやすいのだそうです。

これは、親の見栄の話ではないと思います。子どものことで長く孤独に悩んできた人ほど、「もう大丈夫なんです」と周囲に説明できる形を必要とします。周囲に通じる言葉がないと、自分の安心も確認しにくいのです。親の安心は、しばしば「周囲に通じる物差し」で測られます。子どもの成長の物差しと、ずれていて当たり前です。

ずれを知っているだけですこし楽になる

このふたつの構造は、知っていても消せるものではありません。ただ、知っていると、いくつかのことがすこし楽になります。

まず、心配が続く自分を責めなくてよくなります。それは構造の産物であって、あなたの欠点ではありません。次に、卒業や合格という大きな結果を待つあいだ、途中の変化を見る窓口が持てます。学校の面談で「最近、学校ではどんな様子ですか」と聞いてみてください。親には見えない場所の変化を、いちばん近くで見ている人から受け取れます。

心配は、もしかすると卒業の日まで消えないかもしれません。それでも大丈夫です。変化は、親から見えないところで、先に始まっています。心配しながら待つ、で十分です。

参考文献

*1: 文部科学省|トビタテ!留学JAPAN

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この記事を書いた人

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