【株式会社デジアラホールディングス 代表取締役会長 有本哲也 INTERVIEW】数千万の借金から起業。年商200億円の会社へ。“逃げ道がない”ほうが、人は強くなれる?

スピーカープロフィール:有本 哲也(ありもと てつや)
株式会社デジアラホールディングス 代表取締役会長。祖父・父ともに商売を営む家に長男として生まれる。大学卒業後、銀行員として勤務するも、父の会社の倒産にともない多額の借財を引き継ぐ。「返すために稼ぐ」ことを出発点に、2000年4月に有限会社デジタルアライアンス(現・株式会社デジアラホールディングス)を設立。エクステリアのEC「エクスショップ」、外構の提案から施工までを担う「ガーデンプラス」などを育て、従業員305人(2026年3月期・連結)の企業グループに成長させた。社団法人兵庫県中小企業家同友会 代表理事。ヴィッセル神戸オフィシャル・ダイヤモンドパートナー、神戸ストークス オフィシャル・ゴールドパートナー。

数千万円の借金。

その返済のためだけに始めた商売が、いまや従業員305人を擁する企業グループに。

華々しい起業物語かと思いきや、原点は「トイレもない高架下の倉庫」。それでも前に進めたのはなぜか。進路に迷う高校生に、驚くほど重なるヒントがありました。

インタビュアーは、青楓館高等学院3年生の大瀬戸・三宅
目次

「本当に普通の学生でした」――部活一色だった高校時代

==生徒==

まず、有本会長がどのような学生時代を過ごされたのか、聞かせていただけますか?

==有本さん==

いやあ、もう本当にありふれた話ですよ。高校はサッカー部で、ほとんど部活ばかり。サッカー部に在籍しながらバンドを組んで、サッカー部の顧問の先生に怒られたりはしましたけど、性格は真面目なほうで。本当に、普通の普通の学生でした。

==生徒==

大学はどのように選ばれたのですか?

==有本さん==

それが、何も考えていなかったんですよ。当時は夢とか、具体的にやりたいことなんて何もなかったですから。自分の偏差値で行けるところを探して、家から近いという理由で決めたくらい。将来自分で事業をやるなんて、まったく思っていませんでした。

==生徒==

ご実家は、商売をされていたんですよね。

==有本さん==

祖父も父も商売をしていて、私はその長男の長男。だから、普通のサラリーマン家庭がどんなものか、私は知らないんです。家には職人さんが出入りしていて、父とはほとんど顔を合わせない。そういう環境で育ちました。

小学校にあがるくらいまでは、裕福だと思っていました。でもその後、父の商売がうまくいかなくなって、決して裕福ではなくなった。振り回される父の姿を見ていたので、「商売だけはしたくない」と思っていたくらいです。

「返すために稼ぐ」――借金から始まった商売

==生徒==

大学卒業後は銀行員になられて、そこから起業へと進まれます。大きな転機は何だったのでしょうか。

==有本さん==

父の会社が倒産したことですね。夜逃げ同然の状態になって、借金が残った。私は長男で、当時銀行員でしたけど、放っておけない。連帯保証という形で、5,000万〜6,000万円ほどの借財を引き継ぐことになったんです。

==生徒==

その金額を前にして、どう考えられたんですか。

==有本さん==

サラリーマンの手取りでは、どうやっても返せない。だから「商売でお金を稼ぐしかない」と思ったんです。正確に言うと、「商売をしよう」ではなくて、「返さなあかん、稼がなあかん」。それが最初のスタートでした。22〜24歳くらいの頃ですね。

==生徒==

追い詰められると、かえって考えが巡らなくなる気もしますが……。

==有本さん==

いや、逆に巡りまくるんですよ。人間って追い詰められたら何でもやる。妹も弟もいて、母も泣いている。長男の自分が何とかするしかない。

これは今になって思うんですけど、あのとき強かったのは、「やる・やらない」の“やらない”という選択肢がなかったからなんです。選択肢がある方が、人間は迷うし、言い訳もできる。そこしかないと腹を括れるから、逆に気持ちは楽なんですよ。

ネットで出会った仲間が、事業をつくってくれた

==生徒==

そこからどうやって、いまの事業につながっていったのでしょうか。

==有本さん==

ちょうど2000年前後、インターネットが日本に入り始めた頃でした。「何でもお金に変わる」と思っていたから、これからはインターネットだと。トイレもない高架下の倉庫に住んで、電話回線を引いて、ダイヤルアップで独学を始めたんです。まだYahoo!も楽天も本格化する前で、参考になる本もない。ひたすら調べて、自分で始めました。

==生徒==

おひとりで、ですか?

==有本さん==

それが、そうじゃないんです。当時チャットやオフ会で知り合ったネットの仲間たちが、福岡から、東京から、この神戸の狭い倉庫にまで集まってくれて。お酒を飲みながら、みんなでシステムをつくってくれたんですよ。

当時のネットの住人はマイノリティで、すごく優しくて、自分の得意なことを全部教えてくれる。まさに「ご縁」と「人間力」でした。

==生徒==

事業の資金は、どうされたんですか。

==有本さん==

これもご縁なんです。不動産検索のシステムを持って社長さんたちを飛び込みで回っていたら、面白がってくれた5人の社長が、各100万円ずつ出資してくれた。私自身も、消費者金融5社から20万円ずつお借りして100万円をつくって、合わせて600万円。それで2000年に会社を立ち上げました。

父が建材を扱っていた縁もあって、「建材をネットで売る」というのが、いまの主力事業「エクスショップ」の原型になっています。最初はチラシのようなページでしたけどね。

高校生に伝えたいこと その1
「やる・やらない」で迷うより、やるしかない状況に飛び込んだほうが、腹は括れる。そして、動いて出会った人との“ご縁”が、思いがけない場所で次につながっていく。

4億円で訴えられて――「新しいことには、必ず地雷がある」

==生徒==

起業されてから、特に苦労されたことはありますか。

==有本さん==

苦労ばかりですよ(笑)。たとえば、会社をつくって3年目くらいの頃、読売新聞から約4億円で訴えられたんです。

==生徒==

4億円、ですか……!

==有本さん==

当時、神戸のポータルサイトで、最新ニュースの「見出し+リンク」を誰でも自分のホームページに貼れるツールをつくったんです。これが爆発的にヒットして、3か月で100万ユーザーになった。ところが、新聞の見出しの使い方をめぐって提訴された。当時のうちは年商1,000万円ほどの小さな会社で、相手は大新聞ですから、大変でしたよ。クリスマスの、今の妻との初デートの日に新聞に載って、朝から電話が鳴りやまなくてね。

==生徒==

その裁判は、どうなったのですか。

==有本さん==

争点は「新聞の見出しに著作権があるか」。一審の東京地裁では、実質的にうちが勝ちました。その後の控訴審まで含めて3〜4年争って、いまでは著作権法の判例集にも載る有名な事例になっています。

新しいことをしていくと、必ず地雷を踏むんですよ。でも、それを超えていかないと、新しいものは生まれない。そう思っています。

3年ごとに、ビジネスのあり方を変える

==生徒==

「同じシステムを3年使い続けたら衰退する」とおっしゃっていたと記事で読みました。新しい事業をつくり続けるのは、お金がなかった時期からの姿勢なんですね。

==有本さん==

システムというより、ビジネスのあり方の話ですね。それを変え続けないと、絶対に生き残れない。先行した「エクスショップ」に対して、次の「ガーデンプラス」は7年後にローンチしました。事業を重ねていかないと、会社は成長しないんです。だいたい3年ごとに見直しながら、どんどんトライしていく考え方ですね。

「有本の会社に関わってよかった」と思ってほしい

==生徒==

いまは会社を経営するうえで、何がやりがいや原動力になっていますか。

==有本さん==

最初はお金でした。返さなあかんかったから。でも、いまは違いますね。毎年、新入社員さんが20人くらい入ってくる。そのキラキラした顔を見ていると、頑張らなあかんなと思う。

一つのモノやお金のためというより、人との関わりなんです。「有本の会社に関わってよかった」「入ってよかった」と思ってほしい。その気持ちが、いまの推進力になっている気がします。

==生徒==

社員の方々と接するときに、大切にされていることはありますか。

==有本さん==

うちは約300人の会社ですが、実は私、新卒の社員さんとはほとんど会わないんです。入社式で会うくらい。私が日頃コミュニケーションをとるのは、創業初期からの幹部(フロントメンバー)9〜10人。

創業5年目、まだ10数人だった頃の写真があるんですけど、その頃のメンバーが、いまのフロントメンバーなんですよ。仲は良いけれど、ドライで喧嘩もする。そういうチームで動いています。会社の理念や考え方は、その幹部から部長、課長へと、ちゃんと現場に伝わっているかどうか。そこを大事にしています。

失敗できるうちに、たくさん動け――次の世代への“恩送り”

==生徒==

もし高校生に戻れるなら、何をしますか。

==有本さん==

うちの息子には、18歳の高校卒業のときに1,000万円を「出資」して、会社をつくらせたんです。資産を残すつもりはないけれど、高校や大学の時期にトライした経験の多さが、将来の選択肢を増やすと思っているので。

失敗してもいい。むしろ、リトライできる環境があるうちにやったほうがいい。だから若い人には、どんどん挑戦してほしいですね。

==生徒==

神戸のスタートアップ支援にも取り組まれていますよね。

==有本さん==

神戸経済同友会でスタートアップ委員会の委員長を務めていました。高校生や大学生が、もっと挑戦できる環境をつくりたいんです。独立しなくてもいい。いろんなことを経験して、選択肢を持ってほしい。

じつは、CVC(投資会社)をつくって神戸のスタートアップに投資しているのにも理由があって。かつて私に100万円ずつ出資してくれた社長たちが、裁判のあとに「返さなくていい。返せるようになったら、次の世代に回してやってくれ」と言ってくれたんです。その“恩送り”が根底にある。だから今度は、私が次の世代に回している。そういう流れです。

高校生に伝えたいこと その2
失敗してもいい。リトライできる“いま”のうちに、たくさん動いて経験してほしい。その経験の一つひとつが、将来の選択肢を増やしてくれる。

「こいつはやるな」と思う若者の共通点

==生徒==

若い起業家の方と多く接するなかで、「こいつはやるな」と思う人の特徴はありますか。

==有本さん==

ちょっと厳しめの話になりますけど――結局、最初に「マネタイズできる力」があるかどうかが、すごく大きいですね。

社会貢献はもちろん大事です。でも、企業の一番の社会貢献は、雇用と納税だと思っています。お金を稼いで、社員さんの給料を上げる。「やりがい」だけで人を働かせる“やりがい搾取”になってはいけない。経営は、突き詰めればお金の話なんです。そこをきちんと理解できている子は、めちゃくちゃ強い。

高校生へ

==生徒==

最後に、視野を広げたい高校生へ、おすすめはありますか。

==有本さん==

「旅」ですね。場所はどこでもいい。特に海外に行くと、価値観が変わります。行ったことのない場所、行ったことのない会に、どんどん顔を出してほしい。知らないことを、いくらでも吸収できる時期なんですから。

==生徒==

「動いて、経験して、選択肢を増やす」――今日のお話に一本、太い軸が通っているのを感じました。本日は貴重なお話を、本当にありがとうございました!

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この記事を書いた人

「フライングペンギン」は、今を頑張る高校生へ社会人からのエールをお届けするためのメディアです。「高校生にエールを、がんばる今に可能性を。」をコンセプトに「①高校生に寄り添う、②新しい社会・大人を届ける、③読み終わった後に「がんばろう」と思える」の3つを大切に運営しています。

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